けしのはな

沈黙を舌で味わう

デルタ・ノスタルジヤ

橋の上を滑るブレーキランプの群れ
その下を鴨川が流れている。
時間と空間が交差するその先端に
僕は立っている。


水面に映るその影は
女。男。
子供。大人。
自分、自分。


蝋燭の火のように揺れる自我を
切り離し。
溷濁した精神を
海へと流す。


空っぽの身体で水を掬い
忽ち私は鴨川になる。

 


されど流れを失った川の水は
時間が経てば分離する。
底に溜まったノスタルジヤを
どうか貴方が食べますように。