けしのはな

沈黙を舌で味わう

2020-01-01から1年間の記事一覧

生まれてくることについて

僕は恵まれている。 多少複雑な家庭環境であったとはいえ、今まで不自由のない暮らしをしてきたし、友達にも恵まれている、と思う。客観的に見れば学歴も申し分ないであろうし、サークルの活動も充実している。これといった不満は一切ない。目先の就職や卒業…

日記6/5

僕はバスの右後ろの二人がけの席に一人で座った。lampというバンドを聞きながら、走ったり回ったりする景色を眺めていた。 しばらくすると女学生たちの集団がバスに乗り込んできた。僕の前後の席は空いていたので、そこらに彼女らは座った。僕の前にも一人、…

習作

朝焼けを見ると心が痛むのです。 左心房やら右心房やらがきゅっとなって 思い出に青い血が流れる そしてそれは眼前に蘇ってくるのです。そしてそれは眼前に蘇って 蘇って、しまうのです。 鴨川がごうごうと流れる 知らない鳥がほうほうと鳴いた!僕はといえ…

初恋

緑の犬が吠えるころあなたは何をしているか真っ白の部屋の真ん中で蛇にでもなっているのだろう

救済

ああ神よ! 紫のビロードに包まれた 僕の心を救ってくれ! 悦びに塗れた此岸から 甘美な苦しみへ連れて行ってくれ

心臓

紙の城に幽閉された心臓が、とろとろと血を流す

嘔吐

少年は嘔吐した。 小学校の廊下の真ん中で。 薄黄色の吐瀉物が星型に飛び散った。 酸っぱい匂いが充満した。 教室の窓から首が幾つも飛び出ていた。 野次馬ともが彼を遠巻きに囲んだ。 数多の視線が彼を包んだ。 教師がなにか袋を伴ってやって来た。 少年は…

かねてよりやってみたいことがある。 白いうさぎを燃やすのだ。 白いうさぎのその長い耳から順番に。 焔は体毛の白を黒色に変えながら。 耳を焼き、顔を焼き、前足を焼き、胴を焼き。 尻尾まで到達し、黒い塊になったうさぎの腹から、大きな目玉が覗く。ルド…

何もしたくない

何もしたくない。 身体はいつもの2倍の重力を感じる。 本を読めば活字が紙から落ちる。 他人の話は耳を通り過ぎる。 何もしたくない。 いつまで続くのだろう、こんな状態が。 このまま動けず死んでいくという未来だけはっきりと見える。 生きてる意味とか考…

ミンガスのルーツについて

ミンガスを普段あまり聞かない人々にとってのミンガスのイメージとは何であろうか。野蛮でフリー直前なアンサンブルだったり、実験的で複雑な楽曲構成のせいでなかなかにとっつきにくいイメージがあるかもしれない。実際それは間違いではないが、かと言って…

活字が読めない病

鬱病とは病気である。 原理から言って、ものによるがもはや身体的な病と言って差し支えないだろう。 しかし鬱は、外から見ても中から見てもわかりにくい病である。気分が上向かないとか集中力がないとか、誰にだって訪れることであるし、ただの甘えだと言わ…

晴天に辟易

1月に心を病んでから、コロナの蔓延もあって3ヶ月以上ほとんど家を出ない生活をしている。1月と比べれば気温も随分上がり、庭の匂いもすっかり春らしくなっている。今日も雲一つない青空が広がり、窓からは満開の躑躅や、川の中に光る小石のように控えめ…

女装がしたい

僕は、男女の差というものは個人の差よりはるかに小さく、男女という要素で人の性質を決めつけることがとても嫌いだ。しかしそれはそれとして僕は女装に対する無限の憧れを有する。 確かに自分が紛れも無き「男性」であることに嫌気が指すことは多いが、かと…