けしのはな

沈黙を舌で味わう

祈り

濡れたアスファルトが乾く その短い時間に 生まれて死んだ あなたの祈りは 干からびた向日葵の 追憶の中に眠っている 祈りはやがて 土に還り 地球の中心まで落ちていく 重力が収斂する地点で その一点で あなたの存在のそのすべてが 宇宙のすべてになる あな…

11/5

コロナになった。 人生で、というか今年に入って二回目だ。 チェコフェスという、会社にとっても大事なイベントの直前で体調を崩し、多少動けるようになったかと思えば、陽性だとわかって家から出られなくなってしまった。 「これから頑張るぞ」と意気込んで…

9/27

紙の日記にすることにしたので、しばらくは更新しないことにしました。 みんなに見てほしい記録と、自分の為だけに記していたい記憶とがあり、後者をモノとして残したい気持ちになったので。 みんなに話したい記憶とか考えは、みんなに会って直接話したいな…

9/26

わたしが誰かのことを知ろうとしても、すべてを知ることなんてできない。 わたしたちは、コミュニケーションを取る人の数の面を持つ、不思議な多面体。 同時空間にて、私の肉体の位置から他の誰かが全く同じ月を見ることはできない。 月は地球上の観測者分の…

9/24

昨日のお散歩の備忘録です。 彼岸花を見に、小石川植物園に行きました。 雨上がり、彼岸花には水滴がついていました。 葉のない真っ直ぐな茎の上に燃える灯火ような花が咲いているのを見ると、なんだか此岸ではないところへ導かれている気分になりました。 …

9/22

「オタク」という言葉について。 わたしは、自分がどうしようもないオタクだと感じると同時に、自分は絶対オタクではいられない、という相反した実感がある。 わたしは自分の好奇心に忠実に生きているし、興味あることを深掘りしてしまう。 そういう意味では…

9/21

特定の過去に執着することによって、わたしは何を守ってきたのだろう。 過去を組み換え、時には塗り直しながら大きな建造物を作り上げる。 その中に立てこもることで、現在や未来から目を逸らす。 その建造物は美しい記憶だけで構成されているわけではない。…

9/20

色彩豊かな過去も、光の届かぬ未来も、それぞれが強い引力を持っている。 どちらに引き寄せられてしまうかというのは人によって異なる上に、その引力の強さも変わってくる。 過去に引き寄せられたとしても、それが甘美な故郷としてわたしを呼ぶのか、それと…

9/17

気温は高いが、夏はもう空っぽになってしまった気がする。 残った薄い殻が、段々と崩れていく過程を秋と呼ぶのかもしれない。 もしくは、「秋」が充満するのだろうか? ともかくも、今はなんだか夏でも秋でもない何かだと感じてしまう。 この時間になにか名…

9/10 日記

体調を崩し、自らの力で身体をコントロールできなくなった。 すると途端に、身体は「世界の側」へ遠のいてしまう。 そもそも身体は「世界」に属しているというのに、私は何を思い上がっていたのだろうか? 病とは、「私」という不自然な自意識から、身体を剥…

9/5 日記

「身の程を知る」という言葉に、僕はどれだけ縛られていただろうか? それと同時に、どれだけ救われてきただろうか? 必死に時間の流れに食いついていきながら、過ぎていく日々が零れ落ちていくことに対しても焦りを感じる。 自分が驕り高ぶることができない…

世界のなかに融け出して

1年前の自分が今の自分を見たら、どう思うだろうか? まさかバーで働いてるとはつゆも思わないだろうし、そもそも「忙しくも充実した日々」を送っているなんて、想像つかなかっただろう。 1年前の自分といえば、自由に閉じ籠もり肥大化したエゴを持ったま…

愛することについてのメモ書き

誰かをほんとうに愛するとき 僕は僕の名前を忘れられる 君が僕の名前を呼んでくれるたびに 僕は僕を愛してしまう 僕が望むことはひとつ 君が僕を忘れ去ること 名前のない愛を、ただ 雨のように君に降らせたい 今まで僕は僕だったので 君を愛するポーズで僕を…

蕾のまま

毒を吸い咲いた花は 棘を誇る わたしの棘は わたしの維管束を 刺す 太陽は 日陰にわたしがいることを 許してくれない 日陰や コンクリートの隙間に 育つ彼らは きっとわたしを殺したい 彼らがわたしを殺せるなら どんなに良かっただろう? 春も近づき わたし…

目を逸らし続けて

昔から、僕は弱虫で、怖がりだった。 見たくないものからは目をそらし続けてきた。 それでも周りがどうにかしてくれたり、自分の器用さみたいなものでカバーしてきた。 社会人になってもうすぐ一年が経つ。 今まで通り、僕は見たくないものから逃げ続けてい…

消えてしまえたら、いいのに

美味しい曖昧というアイドルを見てもうすぐ半年が過ぎようとしている。 つまり、初めてアイドルのライブに行ってから、半年が経つのだ。 無味乾燥な日々は潤い、流れるスピードも光の如く加速した。 それだけライブが楽しくて、ライブのある週末を待っている…

生活習慣病

獣にふさわしい仕事からは、たくさんの富がつみかさねられるが、みじめな生活が結果する。 ーエピクロス 労働者となった。朝起きるたび、労働した昨日の記憶が、まるで可笑しな夢のように感じられる。それほどまでに非現実的な日々は、およそ二週間分が積み…

氾濫

(ふと) 追憶の川が逆流する。 汎ゆる思考を飲み込み 逆流する。 灯りかけた小さな炎をかき消し 全てを紫色に濡らす。 (堤防を越えて) 逃げ遅れた人々。 悪霊憑きの豚の群の様。 破滅の道をひた走り 飛び降りる。 (Стихия) 文明は水没する。 川は血が滲…

ジャズ

臀部 臀部 臀部 臀部… しかし収集つかぬ精神修行 愚鈍 愚鈍 闘いと、歌… ウパニシャッドを消化した 四季 四季 四季 四季… うららかな春の哲学! 血 知識 血 知識… どこにも届かぬ去勢馬の夢 臀部 臀部 臀部 臀部…

反ノスタルジー主義 宣言

私は反ノスタルジー主義を標榜する。 それはつまり未来主義であり、過剰なまでの現実主義であり、古い秩序の破壊を目論む前衛的立場である。 振り返ってはならない。オルフェウスよ!お前が愛した女などどこにもいないのだ。 過去とは、未来に照らされたわが…

ウヰスキーの瓶が空になるとき

きっと貴方は驚くだろう ウヰスキーの瓶が空になるとき 愛は無尽蔵だと信じる貴方は 驚くだろう それは循環せず 常に過剰だ バタイユの見た夢 ノスタルジイ・オブ・エコー 耳に入らぬ 泉に顔を近づけて 花になった! 貴方がいつも言うように それは一輪の生…

メタファーの螺旋階段を上って

卒業論文の進捗が芳しくない頃、頻繁に散歩をしていた。これはその頃の話。 僕は糺の森を歩いていた。徹夜明けだったのか、陽が昇って間もない時間帯だったことを覚えている。秋と冬の境に伸びる真っ直ぐな参道を歩く。赤く染まったギザギザの梢が淡い空色を…

それでも

美しく咲く花の苦しみを、我々は想像することすらできない。 私は私を生きることしかできない。 他者と自己の間には、深淵が横たわっている。 痛みというものは、個人的なものでしかありえない。 悲痛は肉体と可能性を滅ぼしてもなお、そこに漂う。 誰にも理…

デルタ・ノスタルジヤ

橋の上を滑るブレーキランプの群れその下を鴨川が流れている。時間と空間が交差するその先端に僕は立っている。 水面に映るその影は女。男。子供。大人。自分、自分。 蝋燭の火のように揺れる自我を切り離し。溷濁した精神を海へと流す。 空っぽの身体で水を…

おとな

僕らは数多の選択肢を持っている、そう思い込んでいるのかもしれない。大空を飛ぶ鳥のように、大海原を泳ぐ魚のように。 でも僕らはきっと、鳥のことも魚のことも、ろくに知らない。 人生というものを比喩的に語るなら、沢山の分かれ道を想像するかもしれな…

ひとはかわるらしい

10月20日は、坂口安吾の誕生日だそうだ。「堕落論」を最初に読んだ頃、僕は本質主義者だったからかその内容にひどく反感を覚えたものだ。人間の本性は堕落ではない、僕はそう思い込んでいたし、そう思っていたかったのだろう。きっと半年前でも同じ感想を持…

せいかつ

ボディソープの容器のふたを開けて、ストロー状の部分から滴り落ちる液剤を使うくらいなら、少なくなった時点で買いに行けばいいとあの人は言うだろうか。生憎僕は、そこまで賢くないもので。 祈りは生活に宿る、と信じている。信じている割には、生活を疎か…

五月

橙色の涙をはらりアスファルトに落とす雛罌粟に触れれば記憶に打ったセーニョを探す 公園のベンチは日向優しい君は頭を垂れて天邪鬼な僕は遠くを見つめる 風に吹かれて頭を揺らめかせる花のように君は… 白い雲… … 自分でも知らぬ純白な言葉が口の端から洩れ…

朧月夜

その花びらを山に残して無残な姿で登りゆく茎はゆつくり伸び、空は黒い葉っぱに包まれる さながらそれは悪魔の翼その瞳は涙に滲み鋭い牙を剥き出して天に向かいて咆哮す ああ神よ 孤独に咽ぶ我を見て何を思う? … 茎が世界を二分した時彼は消え 光に満ちてし…

痛みと信仰(前編)

ベッドにこぼれる 仄暗い灯りのもとで わたしはこの自分と自分の運命を あなたの最上の贈物だと意識するのが心地よいのです 《В больнице》 Борис Пастернак 不幸においてこそ神を知り得るとしたのは、哲学者シモーヌ・ヴェイユである。もちろん、不幸は神の…