けしのはな

沈黙を舌で味わう

それでも

美しく咲く花の苦しみを、我々は想像することすらできない。


私は私を生きることしかできない。


他者と自己の間には、深淵が横たわっている。


痛みというものは、個人的なものでしかありえない。


悲痛は肉体と可能性を滅ぼしてもなお、そこに漂う。


誰にも理解されない悲痛。


誰も理解できない悲痛。


現実を前に、呆然とすることしかできない。


意味もなく空は青く、意味もなく雲は流れる。


誰かの止まった時間を置き去りにして。