わたしが誰かのことを知ろうとしても、すべてを知ることなんてできない。
わたしたちは、コミュニケーションを取る人の数の面を持つ、不思議な多面体。
同時空間にて、私の肉体の位置から他の誰かが全く同じ月を見ることはできない。
月は地球上の観測者分の面をもつ。
無数の面の総体として相手を認識し、愛したいのにも関わらず、わたしはその人がわたしに見せる平面しか愛することができない。
それでも、わたしが知らないその他の面は、その存在の香りを放つ。
その香りは、ときにわたしをどこまでも苦しめる。
わたしの存在が、誰かにとって嘘になりませんように。