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色彩豊かな過去も、光の届かぬ未来も、それぞれが強い引力を持っている。
どちらに引き寄せられてしまうかというのは人によって異なる上に、その引力の強さも変わってくる。
過去に引き寄せられたとしても、それが甘美な故郷としてわたしを呼ぶのか、それとも傷口としてわたしを飲み込むのかによってまた分かれるだろう。
わたしはこのごろ、未来からの引力を強く感じる。
自分の未来の何処かに控える「死」は、スタート地点のみが決まっている半直線だ。
死の向こうに無限に広がる永遠が、わたしの生にまで逆流しないかというイメージに取り憑かれている。
しかし、永遠はわたしが生まれる前にも広がっている。
無限と無限に挟まれた特異なわたしの生がなにか意味を持ちうるなら、一体どんなものなのだろう?
そもそもそれは誰にとっての「意味」なのか?
時間軸の中に引き伸ばされたわたしの自意識に、「現在」という重みに耐えうる強度はない。
未来や過去に腕を引かれても動じない、「体幹」が必要だ。
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好きな作曲家は誰?と聞かれたら、必ずジョビンの名前を挙げるだろう。
彼こそが、ブラジルのサウダージをわたし達に届けてくれた。
その中でも大好きな曲がLuizaとEu sei que von te amorという曲。
特に後者は、追憶と死の香りを漂わす穏やかな曲だが、歌詞は「あなたを愛してしまう」という内容。
どんなに抗ってみても、結局引き寄せられてしまう引力を持っている人に、人生の中で一人くらいは出会うのかもしれない。