けしのはな

沈黙を舌で味わう

愛することについてのメモ書き

誰かをほんとうに愛するとき

僕は僕の名前を忘れられる

 

君が僕の名前を呼んでくれるたびに

僕は僕を愛してしまう

 

僕が望むことはひとつ

君が僕を忘れ去ること

 

名前のない愛を、ただ

雨のように君に降らせたい

 

今まで僕は僕だったので

君を愛するポーズで僕を愛していた

 

いつか君を心の底から愛せるとき

それは僕が僕でない全てになるとき

 

僕が世界になって、永遠になって

どこからともなく君を愛したい

 

君はそれに気づかないまま

君のまま救われてほしい

 

君が僕の名前を呼ばなくてすむまで

僕は海王星で君の手紙を繰り返し読む

 

便箋のかどで切った指の傷口から

僕は永遠になる

 

きっと君がいなくなるとき

僕は差出人のない手紙を書こう

 

それを読んで君は首を傾げるだろう

僕はその一瞬の中に永遠に広がる

 

君が省みない一点に

僕は僕を残して

 

そのまま

消えてしまいたい